大きな水害、土砂災害…。被災された皆さまには一日も早い復興を心からお祈りいたします。阪神大震災から来年で20年。昭和13年にも大きな土砂災害があり、六甲山から土砂が三宮まで流れこみ、多くの人の命が奪われたと知りました。通常時にできない行動は、非常時には決してできないと心に刻み、日常を過ごしていきたいと感じています。 さて、前回まで、組織活性化のための会議のしかたについてお伝えしてきましたが、今回は以前にもお伝えしました、人を育てることについて、改めてお話したいと思います。 先日、とある販売店長さんたちへのメンタルヘルス研修で、私の担当時間の前に語られた産業医さんの言葉が印象に残っています。 ■「新入社員は最初の3年は褒めないこと!!」 「へ?」と思いましたが、少しお話をきいて、まさに「わが意を得たり!!」でした。 ここ最近ずっと、褒めて育てよ!!という言葉が氾濫し、褒めなくてはいけないと潜在意識に刻まれている大人(親や上司)が増えていたように思います。 褒めることが何より人を成長させる…。 厳しく言うと萎縮して成長を妨げるのではないか…。 短所より、長所を見ていくことが大切だと教わった…。 その捉われで、誠実に相手と向き合い、真剣に相手の成長のための関わりができなくなってしまって悩まれ、私に相談されることが非常に多いのです。この手のお悩みを大きく分けると、「年上の部下への指導(叱り方)」「若年職員(社員)への指導」です。 年上の部下への指導はまた次回以降のお楽しみにして、この若年社員への指導について考えてみましょう。親などに厳しく向き合われた経験が薄いおかげで、挙句の果て、若年の彼らの口から「僕は褒められて育つタイプですから、よろしくお願いします」などという言葉まで聞かれるそうです。私など、そんな言葉を聞いたら、きっと「なんじゃそれ…!!」と思ってしまうに違いありません。で改めて… この時期特に大切な成長ポイントの一つは、組織人として、自分の今のチカラや役割をじっくり見られるようになること。先輩や上司の言うことを、まずは素直に自分に組み入れ、咀嚼し、自ら成長しようとすることだと思います。 では、そのために何が必要でしょうか。 ●冷静に自分を過大評価せず、現実を見つめる力。 ●組織で自分が、今後貢献していけるように思える「未来」に対する希望。 ●チャレンジしていける行動力 こんなことが挙げられますね。 ではそのために関わる側はどうしたらよいでしょうか。 褒めて動かそうとすると、若い彼らは自分を過大評価し、俗にいう「うぬぼれ」が生まれかねません。等身大の「まだまだ未熟な自分」をしっかりと自覚してもらうことから仕事は始まりますので、3年は褒めるのではなく、大切な組織を構成していく「人」として認めていきましょう。例えば、出来ているところはきっちり正確に認め、出来ていないところは未来への伸び代として、粘り強く観てあげること。出来ていないことは毅然として伝えること。その伸び代が埋まった自分を想像できるようにじっくり話をし、本人からも、それを引き出す時間をとること。一つ一つ、着実に足場を踏み固め、丁寧に仕事をしていくことで、充実した未来に近づきます。 短絡的な、言葉だけの作為的な「褒め」は、一瞬のモチベーションを上げますが、本人の存在意義と、未来へつながる「仕事の遣り甲斐」は、永続的に力を発揮します。 楽しいことばかりが仕事ではありません。時にはしんどいこと、辛いこともあると思います。自分の力を冷静に見つめ、未来への希望を持ち続けて、行動を続けてもらうためには、「今は力を発揮できないかもしれないけれど、自分は、この組織で大切な存在である」と思える場を上司として作ってあげましょう。 まあ、私たち自身も未来を見失うことも多々ある現実、一度こんな思考で自らを振り返る必要もあるようですね。 次回はもう少し具体的なお話をば…。 |